円建て金の資産運用戦略:先物取引で“毎日買い”は本当に有効か?徹底検証!

当ページのリンクには広告が含まれています。
目次

金価格の上昇は激しく、単純に毎日、買えばいいのではないか?

ここ数年、金価格の上昇が目覚ましい状況が続いています。
2011年には1グラムあたり4,000円台だった円建て金は、2024年には12,000円を突破。
2025年現在では、15,000円を超える勢い。

これほどの値上がりを目にすれば、「とりあえず毎日寄付きで買って、終値で売れば儲かるのでは?」と考えるのも自然です。

そこで、実際に2011年から2024年のデータを用いて「毎日寄付きで買い、終値で売る」シンプルな戦略を検証してみました。

表1:年別 寄付き買い・終値売りの損益(×100倍換算、ミニ取引で1枚)

年度 合計損益(円) 平均損益(円) 勝率(%)
2011-10,700円-43円49.00%
201257,400円231円55.12%
2013-11,500円-47円48.60%
201446,900円191円52.01%
2015-45,300円-185円46.44%
201613,800円56円51.38%
201720,100円81円53.44%
2018-16,100円-66円46.72%
201965,000円264円57.48%
2020341,800円1,407円68.30%
202131,200円127円51.30%
2022114,500円470円53.70%
2023166,500円678円56.90%
2024276,200円1,127円60.40%
年によって多少のばらつきはあるものの、多くの年でプラス収益となっており、特に2020年以降は明らかに高勝率・高利益の環境が続いていることが分かります。

問題点、課題は?

一見魅力的に見えるこの「毎日買い」戦略ですが、実際にトレードを継続するには重要なリスクや課題があります。

大きなドローダウンを許容する必要がある

2024年のデータでは、1回の取引で251円(=25,138円)以上の含み損を抱えた日が12回ありました。
しかしそのうち、最終的に利益で終わったのはたったの1回(勝率8.3%)。
平均損益は-25,791円、合計損益は-309,500円と、深刻な損失を出しています。

このような大きな逆行を耐える戦略では、十分な資金力と強固なメンタルが必要となり、
個人トレーダーにとってはリスク過多なアプローチともいえるでしょう。

固定ロスカットではボラティリティに対応できない

かつて広く使われた「45円ロスカット」や「60円ロスカット」は、金価格が低水準だった時代には妥当でした。
しかし、価格が12,000円を超える現在では、こうした固定ロスカットは市場の変動に全く対応できていません。

2024年のATR×1.5による平均ロスカット幅は251.38円。
これは、45円固定ロスカットが現在の市場のわずか18%程度の幅しかカバーしていないことを意味します。

表2:固定ロスカットに対する適応度(2021〜2024年)

年度ATR1.5
ロスカット幅
適応度(45円)適応度(60円)適応度(100円)
2021105.81円0.430.570.95
2022143.58円0.310.420.70
2023129.61円0.350.460.77
2024251.38円0.180.240.40
※ 適応度 = 固定幅 ÷ ATRベースロスカット幅
この表からも明らかなように、年を追うごとに固定ロスカットの「ズレ」が大きくなっており、
市場に適応するためには、価格水準やボラティリティに連動した戦略が必要だといえます。
ATR(Average True Range)とロスカット幅の関係

ATRとは?ロスカット幅との関係

ATRとは何か?

ATRは、「平均的な値動きの大きさ」を数値で表した指標です。
特にトレードでは、「1日あたりどれくらい価格が動くか」を測るために使われます。

たとえば…

  • 金価格が1日で
    • 高値:12,300円
    • 安値:12,100円
  • この場合の値幅:200円

このような値幅を一定期間(たとえば14日)で平均したものがATRです。


なぜATRがロスカットに使えるの?

市場には静かな日もあれば、激しく動く日もあります
だからロスカット(損切り)をいつも同じ「45円」など固定幅にしてしまうと、こうなります:

相場の状態固定ロスカットで起きやすいこと
値動きが大きいすぐにロスカットされてしまう(ノイズに反応)
値動きが小さい必要以上に広く損失を許してしまう

ATRに基づいたロスカット=「相場の呼吸に合わせる」

たとえば、ATRが200円のときに「ATR×1.5倍」をロスカット幅にすると:

  • ロスカット幅:300円
  • その日、300円逆行したら損切り

この方法なら、相場のボラティリティに応じて、“ちょうどいい距離”でロスカットを設定できるのです。


なぜ固定ロスカットでは不十分なのか?

2011年ごろ、金価格は1gあたり4,000円台。
→ 1%の変動 = 約40円 → 45円ロスカットは妥当でした。

しかし、2024年には12,000円を突破。
→ 1%の変動 = 120円
→ 45円ロスカットでは0.375%しかカバーできず、ちょっとした変動で損切りされてしまう


ATR×ロスカットのまとめ表(イメージ)

金価格1%の変動幅ATR(例)ATR×1.5コメント
4,000円40円30円45円昔の相場、45円は妥当
12,000円120円167円251円現在の相場、251円が現実的な幅

結論

  • ATRを使えば、相場の動きに応じて自然なロスカット幅を設計できる
  • 固定ロスカットは、相場が大きく変わると“ズレたリスク管理”になる
  • 現代の金市場では、「ATR×1.5」などボラティリティ連動型ロスカットが必須

以下は、ブログ記事の締めくくりに自然に入れられる次回テーマへの誘導文です。
ご指定いただいた2つのテーマを違和感なく読者に示唆します。


次回予告:損失を抑えて利益を伸ばすには?

今回の記事では、「毎日買えば勝てるのか?」という視点から円建て金取引を検証しました。
その結果、確かに利益が出る年も多い一方で、大きなドローダウンやロスカットの難しさといった課題も浮き彫りになりました。

そこで次回は、こうした課題に対する2つの有効なアプローチをご紹介します。

  • 解決策①:ロスカットを適切に設定し、致命的な損失を防ぐ方法
  • 解決策②:エントリー条件を見直し、“勝てる場面だけ”を選び抜く工夫

金市場の変動に翻弄されず、より安定した運用を目指すための戦略を、データと実例を交えて解説予定です。
ぜひ次回もお読みください。

目次