金先物市場は、過去40年にわたって長期的な成長を遂げてきました。
一方で、歴史を振り返れば、大きなドローダウンや長期停滞も決して珍しいものではありません。
本記事では、1987年から2024年にかけての金先物市場の推移を振り返りながら、
大幅下落日の傾向分析を通して、
「どうすれば上昇トレンドの波に乗り、破産せず生き残ることができるのか」を徹底的に考察していきます。
リスクを正しく理解し、チャンスを確実に掴むためのヒントを、できるだけ具体的なデータとともにお届けします。
1. 金価格の推移
金先物市場は、1987年から現在まで長期的な成長トレンドを描いてきました。
ここではサンプル年を増やして、推移を具体的に確認します。
年 | 金価格(円) |
---|---|
1987年 | 約2,000円 |
1997年 | 約1,300円 |
2007年 | 約2,000円 |
2011年 | 約4,500円 |
2020年 | 約6,500円 |
2024年 | 約14,000円 |
結論:
短期的な下落や停滞を挟みつつも、金価格は約7倍以上の上昇を達成してきました。
資産保全手段として、長期的な信頼を築いているといえます。
2. 大きなポジションを持ち続ける難しさ
長期保有には高リターンの可能性がある一方で、大きなドローダウンや長期停滞のリスクも伴います。
時期 | ドローダウン幅 | 停滞期間 |
---|---|---|
1987年~2007年 | 約-35% | 約20年間横ばい(2,000円→2,000円) |
2011年~2015年 | 約-40% | 約4年間(4,500円→2,700円) |
また、小さいポジションや少量保有では、
せっかく長期間耐えたとしてもリターンが限定的になり、投資妙味が薄れてしまいます。
保有量 | 10年間の期待リターン |
---|---|
金1g | +約1,000円 |
金100g | +約10万円 |
金1kg | +約100万円 |
結論:
長期上昇の恩恵を得るには、大きな変動に耐え、かつある程度のポジション量を持つことが重要です。
3. シンプルな寄付き買い戦略
「寄付きで買い、当日または翌日終値で売る」だけのシンプルな戦略を検証しました。
期間 | 勝率 | ペイオフレシオ | 平均損益(円) | 総損益 |
---|---|---|---|---|
1987-2010年 | 50.8% | 0.91 | +124円 | +512,000円 |
2011-2024年 | 52.7% | 0.98 | +236円 | +807,700円 |
結論:
2011年以降、勝率・ペイオフレシオともに改善。
現在の市場環境では、シンプルな寄付き買いでも十分通用する可能性があります。
4. バルサラ破産確率の確認
まず、「バルサラ破産確率」とは?
トレーダーが「勝率」と「ペイオフレシオ」をもとに、
資金がゼロになる確率を数値化した指標です。
検証データ:
年 | 勝率 | ペイオフレシオ | 破産確率(推定) |
---|---|---|---|
2020年 | 58.4% | 1.12 | ほぼ0% |
2022年 | 47.8% | 0.87 | 要注意 |
2024年 | 51.2% | 0.98 | 低リスク |
結論:
ペイオフレシオ1未満の年(例:2022年)は、破産確率が高まるリスクあり。
勝率だけでなく、リスクリワードバランスにも注意が必要です。
5. スラストアップ戦略の検証
スラストアップ戦略とは?
「前々日の高値を前日終値が上抜けた」場合に、
翌日の寄付きで買うことで、上昇モメンタムに乗ることを狙う戦略。
検証結果:
項目 | 通常寄付き買い | スラストアップ買い |
---|---|---|
勝率 | 52.7% | 54.3% |
平均損益 | +236円 | +351円 |
トレード数 | 多い | 減少 |
結論:
スラストアップ戦略は、無駄なエントリーを減らし、精度を向上させる効果がありました。
6. 戦略の最適化
スラストアップにさらに条件を加えて精度を高めました。
フィルター | 効果 |
---|---|
前日陽線のみ | ダマシ回避 |
ギャップ幅±30円以内 | 寄り天回避 |
高値引け | 強い上昇の確認 |
結論:
取引機会は減るものの、勝率60%以上・ペイオフレシオ1.2超が視野に入りました。
精度と安定性が向上します。
7. 大幅損失トレードの特徴
1%以上の下落を記録した日(65件)を分析しました。
傾向 | 内容 |
---|---|
前日陽線 | 約60% |
小ギャップアップ | 多発 |
始値≒高値(寄り天) | 高頻度 |
結論:
「前日陽線+小ギャップ+寄り天」は、大幅下落リスクの典型パターンです。
これを避けることでドローダウン抑制が可能です。
8. 大幅下落を売りサインにできるか?
これらリスクパターンを逆手に取り、
前日陽線+小ギャップ+寄り天の日に「売り」を仕掛ける案も検討しました。
結論:
理論上有効ですが、逆張りになるため、
踏み上げリスク・損切りルールの厳格管理が必須となります。
9. 売りサイン探しと買わない日の選別、どちらが有利か?
比較表:
選択肢 | 評価 |
---|---|
売りサインを探す | × 高リスク・不安定 |
買わない日を選ぶ | ◎ 勝率向上・リスク回避 |
結論:
売るよりも、「買わない日を見極める」方がパフォーマンス改善に直結します。
10. 大幅下落日の傾向分析
1%以上下落した日のデータまとめ。
項目 | 内容 |
---|---|
件数 | 65日 |
平均下落率 | -1.8% |
最大下落率 | -6.22%(2024年8月5日) |
結論:
大幅下落には一定の予兆パターンが存在しており、
これを検出・除外するだけでも資金効率の向上が期待できます。
まとめ
金先物取引においては、
- 単純な寄付き買いでも一定の優位性があり、
- 戦略フィルター設計によってさらに高精度化が可能、
- 売るよりも、「買わない日を見極める」リスク回避型が有効であることが明らかになりました。